戦は、伝説へ…

かつてこの世界は大喜利魔王によって
恐怖で支配されていた。
だが、ひとりの英雄によって魔王は封印され、
世界は救われた。
彼は勇気のある者、「大喜利勇者」として慕われ、
平和な日々が訪れた。

2019年、何者かの手によって魔王の封印が解かれ
世界は再び恐怖に包まれた。
各地から名のある大喜利戦士たちが魔王討伐に旅立ったが、
帰ってくる者はいなかった。
ただひとり、戦地から命からがら逃げ出し、
今もどこかで生きている者もいるという。

世界が恐怖に一歩また一歩と近づいていく中、
打つ手が無くなった人類は
新たなる勇者の登場を信じて待つしかなかった…

今日は村の成人祭。
この村で16歳になった若者は司祭に祝福を受け、
旅に出るしきたりがあった。
彼も今日16歳も迎え、
晴れて旅立ちの時を迎えた。

「俺もようやく旅に出る歳になった。
魔王討伐に行ったっきり帰ってこない
父さんを探しに行くんだ！」

彼の意志は固かった。
1年前、魔王討伐の戦士に志願し、
旅立った父親の行方を探すという。

「父さんは必ず生きている。心配しないで母さん。」

父が居なくなってからすっかり元気のなくなった母親を励まし、
彼は旅たちの準備をしに隣町に出た。

「まずは武器、そして防具、そうそう回復薬などもそろえよう」

いろいろと町中を歩き回るもなにも揃えられずにいた。

「た、高い…」

彼の持ち金では、せいぜい回復薬数個をそろえるのがやっとだった。
武器や防具の店ではお金がないというとすぐに追い返されてしまった。

「困ったな…」

途方に暮れながら歩いていると、
前から怪しげな布を被った人影が勢いよくぶつかってきた。

「痛てぇ！なにしやがんだい！」

彼の声に少し立ち止まりながらもすぐに建物の影に消えていった。
その目線の先に何か光るものがあった。

「うん？なんだこれ？ペン？」

それは透き通った見たこともない綺麗なペンだった。

「あいつが落としたのか？」

辺りを見回すが誰もいない。
たしかにあの怪しい人物が落としたに違いなかった。
おもむろにキャップを取り確かめてみたが普通のペンだった。
そうしていると、

『ちょっとそこのあんた』

誰かに呼び止められた。
振り向くと、さっきの怪しげな布の人物が真後ろにいた。

「あ、あんたは！痛かったじゃないか謝れ！」

すごんで向かった彼だが、
その人物はおもむろに布を取り払った。
すると、なんとも寒そうな薄着の女戦士が姿を現した。

「え？」

あっけにとられていると、女戦士が語り掛けてきた。

『そのキャップ、あんたが取ったのかい？』

摩訶不思議な質問に彼は戸惑いながらも、

「そ、そうだけど…？なに？」

女戦士は少し驚いた顔をしたあと続けた。

『まさか、こんな所で出会うとは…伝説の勇者に…』

「ゆ、勇者？誰が？」

『あんただよ』

「え？俺？」

『それはかつて、大喜利魔王を封印した
大喜利勇者が使った…』

伝説の聖ペン
「ヨクミエール」だ！

「で、伝説の聖ペン？ヨクミエール？？」

『ああ、そのペンのキャップは勇者以外に取ることはできない、
だがあんたはキャップを取った』

「ええ？」

『すごい、勇者はここにいたんだ！これで魔王を倒せるぞ！』

「魔王を？これで？」

『ああ。あんた、私とパーティー組め！』

「え？いきなり？」

『魔王討伐の！』

「魔王討伐！？いや、俺は父さんを探しに…」

『なら父さんも一緒に探してやろう！』

「本当かい？でも、武器が…」

『武器がなくて困っているんだろう？
さっき店で門前払いされているところを見てたよ。
使いな、そのヨクミエールを。』

「いいのか？俺が使って…」

『いいさ』

「…なんだかわからないけど、武器がもらえるんなら…」

『よし、決まりだ！よろしく！そう、あたしの名前は…』

こうして彼は女戦士と共に、魔王討伐へ、
そして行方不明の父を探しに旅だったのだ。